My役所ライフ

役所生活30数年のエピソードを通じて、役所でのちょっとした仕事のコツや活き活きと働くヒントを紹介します!

レンガ職人が訴えること

ある人が道を歩いていると、レンガを積んでいる職人たちに出会い、

「何をしているんだい」と尋ねました。

最初の職人は、「決まっているだろう、レンガを積んでいるんだよ」

二番目の職人は、「レンガで壁を作っているのさ」

三番目の職人は、活き活きと「教会を作っているのさ」と答えました

 

経営は明確なミッション・ビジョン(=教会を作る)を示さないといけない。それを共有することで個人のモチベーションが高まり、組織の成果も高まるということを、P.F.ドラッガーは、このイソップ寓話を使って説いています。

 

この話は僕も好きで、朝礼のネタで困ると、よく使わせてもらっています。

あるとき、この話をした後、年配の技術職の人がつかつかと寄ってきて、「課長、よくわかった。壁を作るのに、古臭い方法ばっかりしてないで、外壁パネルとか新しい素材を使えっていうことですよね!俺らがんばるで」

う~ん、そういうつもりでは、、と思いつつ、「うん、がんばって」って(苦笑)

 

ところが、最近になって、この人の理解は、確かに話の核心なのだなあと思うようになりました。教会を作る目的のためには、レンガを積むことにこだわらず最もふさわしい方法を探せってことか。

 

人は、ミッションを理解していても、過去のやり方を否定しにくいものです。レンガ職人はレンガを積むことが自分の人生だった。こだわるのは当たり前。変わっていかなければと薄々感づいていても、やっぽど、より良いアプローチがない限り、これまで以上、一生懸命(倍のスピードで)、レンガを積み続けることを選択し、自分の努力に納得しようとします。

 

そうなると担当者の仕事は、結果的に囚人の穴掘りと同じです。にもかかわらず、管理職がそれに同調してしまうと、教会を作っているつもりが誰も立ち入れない擁壁ができてしまったってこともありえます。これって、みんな不幸です。

 

実際、バブルが崩壊した後も建売住宅を建築し続け大量の売れ残りになったこと、規則を盾にとって拒否していたら、規則が実は法律上間違っていて立場がなくなったことなど、レンガを積み続けたことによる失敗を僕自身、体験しました。

 

さらに公務員は、官僚の無謬(むびゆう)といわれるぐらい、間違いを認めにくい性質。過去を善しとして取り繕おうとしがちです。

レンガ職人から、「おまえが虚心坦懐に判断しないと俺らも困るんだよな」といわれている気がするのです。