本当に大事なことは酒の席に教わった ― 仕事は100%の力でするな ―
新採時代、上司や先輩からしょっちゅう酒に連れて行ってもらった。今は、酒は楽しく飲もう、酒の席では仕事の話はしないという風潮になっているが、当時は、仕事を酒の肴に飲むのが当たり前だったし、ちゃかしたり愚痴をいったりするのが楽しかった。
そして、そこで語られた上司や先輩の言葉が今も僕の仕事の支えになっている。
とにかく訳も分からない新採当時、一人でよく残業することも多かった。いい時代で、上司たちは、時間外、よく職場で囲碁を打っており、戦いが終わると僕は酒に誘われた。
そんなとき、課長から「仕事は100%の力でやりきろうとするな」といわれた。
「自分では完璧だと思っても、周りからはいろいろな注文が付くこともあるし、状況の変化に応じて修正しないといけないこともある。そんな時、100%力を出し尽くして自分なりに完璧に仕上げていたら対応できないからや、それに長く続くもんやない」
当時は、そんなものか程度に思っていた。上司であれば、部下から完璧な仕事が上がってくることを望むはずだとも。
でも、この言葉は心に留まり、自分が管理職になると実によくわかるようになった。
自分が見えていることはすべてではなく、完璧であると思うことは実はそうでないことも多い。それなのにアクセルをべた踏みしていては危なくってしょうがないわけだ。
ところで、その酒の席で、一緒にいた係長が「仕事は8割ぐらいの完成度にして後は上司の手柄にするもんや」といい、課長からあほかと怒鳴られていたのが、よりこの話を覚えている理由でもある。